台風19号後のさいかち窪

 石神井川をさかのぼってせっかく小平市まで来たので、そのまま北上して小平霊園方面へ向かうことにしました。小平霊園内には同じ荒川水系の河川である黒目川の谷頭があります。

 その谷頭はさいかち窪と言われ、小平霊園の中にあって散策路も整備されているので、中小河川の谷頭としては比較的有名な場所です。

 この谷頭の湧水は、小平霊園が開園する1948年頃までは常時湧いていたそうですが、その後は何年か1度大雨の後にだけ湧くようになり、それが逆に「幻の泉」として知られるようになりました。東京の名湧水の候補にも挙がって今しましたが、やはり常時湧いていないのはダメだということで選ばれなかったようです。


 やはり石神井川のゴルフ場と同じく、霊園も一見緑地的な空間にも思えますが、結局は霊園内の歩道というのは排水が徹底されているので、あまり浸透力の高い土地ではないのでしょう。

 とはいえ、石神井川をよく散策する私から見れば源流部の谷頭が森林として残されているのはとても羨ましいことです。


 さっそく、谷へと降りていきます。

 さいかち窪の湧水は、このような管渠が2つあり、そこから湧き出しています。

 これは恐らく、本来の谷頭は2つに分かれてさらに数十m程度つづいていたものが、墓地を造成する際に管を埋められ埋め立てられたものだと考えられます。

 従って正確には谷頭は少し埋め立てられていることにはなりますが、この暗渠出口から下流には武蔵野の自然が残された林の中を水が流れます。

 この小川はさいかち窪の中央で沼を形成します。

 この沼は本当に湧水が湧いているときにしか現れないので最近は下草が生えていることが多いのですが、この日はその草地にそのまま水が湛えられ、木洩れ日もあって少し幻想的な雰囲気を作り出していました。

 ちなみにさいかち窪という名称は、谷底にサイカチの巨木がたくさんあったからだと言われていますが、今は特にサイカチではなく普通の雑木林の構成樹種でおおわれている印象です。サイカチが今は見られないのは、水辺を好む樹種だからというのもあるのかもしれません。


 さいかち窪の小川はその北側で暗渠の中に吸い込まれ、盛り土された新青梅街道をくぐって北上。そこから先は「さいかちの道」という散策路が整備されていますが、その水は白く濁っています。

 このあたりは石神井川と異なり、生活排水の下水道接続が完了していないようなのです。

 護岸の過剰な整備がところどころに見られますが、周囲の環境は比較的良い場所なので非常にもったいないですね。

 東京の湧水57選に選ばれた柳窪天神社下に到着したところで、今回はここまでにすることにしました。


 それにしても湧出したさいかち窪の光景は一度見ると、また水が湧いた時に見に来たくなってしまいますよね。でもこれは本来武蔵野台地のあちこちにあった光景のはずです。本流だけでなく、支流の上流端でも。


 まとまった樹林帯を取り戻すことは難しいのでしょうが、湧水であれば雨水浸透桝の設置によってある程度回復が見込めます。そのことは、今回の台風で復活したさいかち窪や石神井川の湧水たちが私たちに語り掛けてきています。

武蔵野台地の湧き水復活を考える

外環道の開通工事を控え、 改めてかつて豊富な湧水量を誇った三宝寺池をはじめとした 武蔵野三大泉(井の頭池・善福寺池)の湧き水復活について、 石神井公園を愛する一般市民の立場から考えたいと思います!

0コメント

  • 1000 / 1000